急な発熱時の対応

小児科の外来の患者さんの8割は、発熱をきっかけに受診されます。みなさんも子供さんの急な発熱にびっくりして悪い病気の始まりではないかと心配になり、特にそれが夜間であればなおさら心配が募って一刻も早く小児科に受診させねばとあせった経験がおありではないでしょうか。病院に着いてみると外来は一杯で一時間以上も待たされ、ほかの子供さんよりは元気なようでもあり、家でゆっくり休ませておいたら良かったかなと後悔された事もあったかも知れませんね。
発熱の多くは、かぜ等のウイルスの感染によって起こりますが、もともとはウイルスをやっつけるために、自ら熱を出してウイルスの住み難い環境をつくり出しているといえます。高温になると活発に成る免疫も証明されており、ウイルス感染の殆どは自然に治癒します。つまり、発熱は本人が病気と闘っている証であり、しゃべれない赤ちゃんが病気であることを私達に知らせてくれる大事なサインの一つです。熱は、咳や鼻水と同じように病気のひとつの症状です。発熱と言う症状の原因を考えてみる事から始めていただくと、後から述べる心配な発熱と心配のない発熱の見分けがつき易いと思います
また、高熱になると脳に障害が起こるのではないかと心配される方が多いようで、そのことが急な発熱にあわててしまう最大の理由のようです。熱そのもので脳に障害がおこることはありません。熱の高さが病気の重症度と比例する訳でもありません。この二つのことだけでも、発熱に対して気持に余裕が生まれるのではないでしょうか。

1・発熱時に何をみたらいいか。

 基本的には、こどもの生活、食う・寝る・遊ぶこの三つがうまくいっていれば心配はいりません。熱があってもしばらく様子をみても大丈夫です。このうち二つ以上が調子が悪いときは一度病院に診せて下さい。私達小児科医は、咳、鼻水、嘔吐、下痢などの症状から発熱の原因を見つけるべく診察をさせていただきますが、一番大事に診ているのは、ご機嫌であり表情であり活動性を含めた全体の様子とお母さんの感じ方なのです。つまり、心配な発熱であるか、そうでないかが判断できたら、診察は殆ど終わりです。あとはあまり検査等をする必要も無く、本人の治る力を少し手助けをしてあげればいいだけで、だいたい2ム3日でよくなってくるものです。
でも、お母さんが、子供さんの様子が元気なようだが何か変だと感じていたら、納得行くまで診てもらって下さい。これは、大事なことです。

2.発熱時には、着るものをどう調節すればいいのか。

 体温が上昇しはじめる時は、手足は冷たくなって寒がる時があります。夏でも薄手の長そで長ズボンがいいでしょう。薄手のふとんが必要なときもあります。体温が上がってしまうと暑がりますので調節して下さい。厚着をさせて汗を出させて熱を下げようとする試みがありますが、子供には過激すぎて体力を消耗しますのでやらない方がいいでしょう。

3.発熱時の部屋の温度はどのようにするか。

 暑くもなく寒くもないのが理想です。26度前後でしょうか。エアーコンを使用して構いません。直接風があたらないように工夫して下さい。

4.冷やしてあげる事は効果があるか。

 小さなシート状のものは、解熱効果は有りません。でも、本人が気持よければしてあげてください。水枕をあてたり、冷たい水をビニール袋に入れて脇の下や大腿部に当てたりすると、ある程度の解熱効果があります。水に少し氷を浮かす程度で十分ですが、冷たい水と接する皮膚の面積が多い程、効果があります。

5.解熱剤の使用について。

 発熱そのものが、ウイルスや細菌の増殖をおさえ、身体の免疫能をたかめている訳ですから、原則として、食う・寝る・遊ぶが上手くいっていれば解熱する必要はありません。しかし、熱のために、食欲がなくなったり、眠れなかったりすれば体力を消耗しますので、解熱剤を使って下さい。熱を下げるのは病気と闘う体力を維持する為ですから、必要以上の使用は返って病気を長引かせることになるかもしれません。保育園に預けるために、学校に行かせるために解熱剤を使う事は避けましょう。
急な発熱で機嫌が悪い時に解熱剤で熱を下げてあげると何ごとも無かったように元気を取り戻す事があります。これも、とりあえず心配のない発熱の目安になります。解熱剤は常備しておかれるとよいでしょう。

6.発熱時の食事について。

 発熱時には、栄養豊富な食べ物をあげたい所ですが、胃腸の働きは低下していますので、糖分などの消化の良いものが一番です。また、汗をかいたり、不感蒸泄も増えますので水分は多めに与えます。

7.熱性痙攣について。

 発熱時に突然呼び掛けに反応しなくなり、眼が一点を凝視しあるいは上転し、四肢が硬直したり規則的な動きを繰り返したりするのが、熱性痙攣です。初発は1ム2才でみられ、だれにでも起こる訳ではなく、また熱の高さが高いほど起こる訳でもなく、予想をつける事は出来ません。繰り返す事もあります。舌をかまないようにと、口を無理にこじ明けて、わりばしやスプーンを入れたりするのは厳禁です。呼び掛けたり、身体をゆすったりするのもしてはいけません。もし嘔吐した時に、吐物を誤飲しないように身体を横を向けて、静かに見守ってください。長く感じられますが2ム3分で停まる事がほとんどです。痙攣を起こしたらなるべく早く病院を受診してください。髄膜炎や脳炎などが隠れていないかを、早期に判断して貰って下さい。

8.二カ月未満の赤ちゃんの発熱について

 二カ月未満の赤ちゃんは特別です。二カ月みまんの赤ちゃんの38度の発熱はできるだけ早く、一度小児科を受診して下さい。2カ月未満の赤ちゃんは抵抗力がなく重大な感染症でも症状は出にくく、急速に進行する事があるのです。そのため、私達小児科医も緊張して診察しますし、経過を診るよりも取りあえず検査が必要な事が多いのです。これだけは特別です。
赤ちゃんはかぜにかからないと間違った説を信じておられる方が多い様です。はしかや風疹等、一時的に母親からもらった免疫もありますが、それはごく一部であり、殆どの免疫はなく抵抗力もありません。赤ちゃんには病気の人を近付けない事が一番大事です。