編集発行人 コサカが贈る勝手きままな
つれづれ日記です。ハッピーな日もブルーな日も
美味しい珈琲で、一息いれてください。


8月24日 バルトリン腺の反乱



ここ数日、足をひきずりながら歩いていた。
3年前から始まったバルトリン腺の炎症が原因である。
女性の膣の左右にあるエンドウ豆大の分泌腺で
性交渉を円滑にする液を出す部分なのだが、
忙しくて免疫力が下がると、菌への抵抗力が落ち、
腫れて歩くのもままならなくなる。

3年前の10月、2年前の10月になった時は、
病院で膿をぬいてもらったらすぐに完治したのだが、
3年目の今回はなかなか手強い。
単なる炎症よりもひどい膿瘍になっている気配があるのだ。
前から行っていたウイメンズクリニックでは
まだ膿がそこまでたまっていないから痛くないはず、
漢方で治るといわれ、本当は抗生物質を出して欲しかったが、
しぶしぶ帰宅。炎症が起きている場合、我慢せずに一度、
西洋の薬で楽にしてから東洋の漢方にきりかえた方が
いいというのは猫さんのことで学んだことである。
しかし、その漢方で治ると自信たっぷりに言われるのだ。
痛みはあるにはあるが、まだ歩けるし、
漢方で治るならそれはそれで良いかと望みを託し、
湯で割って空腹時に服用したものの、
やはり炎症を抑える力はなく、翌日みるみる腫れが増大し、
歩くのが大変な状態になってきた。



その日はウイメンズクリニックが休みだったので
これはまずいと新たな婦人科を検索。
一軒目はよさそうだったが不妊治療の患者さんが
多いのだろう、午前中にもかかわらず予約でいっぱい。
何軒か検討したなかで先日書いた荒っぽい婦人科に
行ってしまった。膿をぬいてもらったその日だけは
楽になったものの、処方された抗生物質や消炎剤を服用しても
なっかなかよくならない。
なぜ、どうして?
再び新たな膿がたまりはじめてきたのか、
痛みの質がワンランクグレードアップしている。
わー、これは大変なことになるぞという予感。
抗生物質もきかないとなると、どうすればいいんだろう?
自分で膿を出すしかないのか?



以前から気になっていた、バルトリン腺攻略のプロ
こだいら薬方堂」のサイトをのぞいたところ、
病院でも完治せず、漢方を飲みながら
膿を自壊させて治したという体験談がたくさんでていた。
たまたま出張があったため、プリントアウトした紙を手に、
ワラをもすがる思いで福岡空港から電話をしてみた。
今、福岡にいてこれから東京に行くので
問診をとお願いしたら時間が微妙にあわない。
それでも先方もこの辛さを理解されているらしく、
とにかく羽田についたら一度お電話くださいと
柔軟な対応をしてくださる。
羽田に着くなり、空港内を歩きながら電話すると、
3年前の発症から今に至る状況を聞く限り、
今回は単なるバルトリン腺炎ではなく
バルトリン腺膿瘍になっていると思われます。
漢方を福岡に郵送していたら2日後になりますよね、
でも今日、今すぐにでも飲み始めた方がいいから、
何時でもいいですから来られますか?と
言ってくださったので、申し訳ないが取材の時間を
少しずらしてもらい、小平駅へ直行した。
そこから取材先まで電車が一本だったのも幸いだった。




こだいら漢方堂の薬剤師の方々は、福岡に
漢方の勉強などで訪れる機会が多いそうで、
とても感じのいい女性たちだった。
話せる人がいる、それだけで安心するものだ。
こちらには10代から60代のバルトリン腺に悩む女性が
全国から訪れるらしい。その数は年々増えているそうだが、
バルトリン腺炎というのは、患部が患部なだけに
女性も口に出すのが恥ずかしいこともあり、
普通の漢方薬局ではほとんど知られていないという。
そういうわけで、病院でバルトリン腺の開窓術や
摘出手術をしてしまった後でみえる若い人も多いとかで、
もっと早く来てもらえたらよかったのにと
思うんですよねえといわれていた。


痛みがひどいようですから
漢方をのみながら病院の消炎剤をのんでも
いいですからねと言われるそばから、
私が鞄にいれていた消炎剤を
目の前の麦茶でゴクリとのんだら、
「あら、今、飲んじゃったの?」
「はい」
「じゃ、今から漢方ものんでくださいね」と
4種類の漢方薬をグリーン系の美しいデミタスカップに
いれて、湯を加え、クルクルクルクルとていねいに
かき混ぜて出してくださった。
わっ、とろりと濃厚なデミタス珈琲・・・に
瓜ふたつの漢方薬エキス。
苦いから50ccくらいのお湯に全部とかして
一気に飲んだあと、口直しをしてくださいねといわれ、
ズズッとひと口。 うん、たしかに苦みばしっているけれども、
どこか珈琲っぽい濃厚な甘みもあり、十分に許容範囲。
家に戻ったら、我が家にある
素敵なデミタスカップで飲むとしよう。


「珈琲みたいにも感じられるでしょ。
良薬は口に苦しといいますけれど、だんだん
おいしく思えるようになりますよ。
それでね、この漢方薬は慢性よりも急性の時に
体にとりこむ方が反応も早いんですよ。
ね、ヨカッタですね」
大きな目を見開き、愉しげに教えてくれる薬剤師さんに、
私も「へえーっ、そうなんですね」と明るく答える。
漢方などを服用するとき、いや病を患っているときに
大切なのは、治るために今がある、絶対治るんだという
希望に向かう前向きな気持ちである。
いろんなことをプラスにとらえる力、
ひと筋の光を得た時のワクワク感というようなものが、
治癒への早道なのだ。
「漢方薬を飲んでいくと、しこりが小さくなるか、
膿が自然に出て自壊するか、なんだけど、
小坂さんのケースは、どういうふうになっていくか
わからないけど、楽しみにしていましょう。
自壊して膿を出してしまったら、そこから
免疫力をあげるためにも漢方薬などで体を整えていく、
それが根本的治療につながりますからね」
地獄に仏といいますか、この時期に東京出張が
入っている私って、つくづく運がいい。
一体何しに来たんだといわれそうだけど、本当に助かった。




帰りは腫れがさらにひどくなっていたため、
夜中の空港の椅子を3席分つかって横になり、
出発時刻まで汗をかいて寝ていた。
飛行機のなかでも幸い私の隣2席があいていたので、
事情を話して漢方をのむための白湯を
もってきてもらったあと、横になった。
白湯のおかわりと、エビアンのミネラルウォーターを
無料でもってきてくださったスターフライヤーの
親切でかわいい客室乗務員さん、本当にありがとうございます。
どこ調べかわからないが、お客様満足度ナンバー1
連続受賞は、伊達ではないと心にしみた。



自宅に戻った時には、歩くのもやっと。
とにかく股の間を針で刺されているかのような激痛が、
一歩歩くごとに突き上げてくる。
膿でふくらんだ患部を極力動かさないように
股で固定しながら歩くのがよいとわかったはいいが、
ベッドから起き上がるだけでも激痛が走る。
ヒイッーーーーーー!
どう歩いても、どの態勢でも、痛い。
少々の振動や刺激にも身が縮まり、脂汗が出る。
声にならない叫びがでるほど、容赦なく痛む。
それでも猫にごはんをあげねばならない。
最低限のトイレも行かねばならない。
もちろん「小」を達するのが精一杯で、
「大」などそんな大それた行為は
拷問クラスの激痛がもれなくついてくるため、
できるわけがないし、体力も勇気もない。


原稿確認の仕事がひとつ残っていたので
歯をくいしばり、じりじりと仕事部屋に
移動し、FAXを受信した。
取材先に電話したら、なぜか毎回、喧嘩腰の応対を
してくる広報担当者から、きつい言葉で修正をいわれる。
最近、こういう系の仕事をしてなかったこともあり、
私がぼーっとしているからかもしれないが、
なんか世知辛いなあ。
仕事はできる人なんだろうが、
もう少し言い方があるだろうと思いつつも、
こちらは下請けの身なので低姿勢で応対する 。


ま、ともかく、パソコン前に立ったついでに
(もはや座れません、内股に力を入れて
腫れを固定し、立っているので精一杯)
バルトリン腺の体験者の話を検索したところ、
妊娠前後に何度も何度も発症して、そのたびに
驚くべき早さで自壊させている、
その道のプロというような人のブログがでてきた。
その人は、バルトリンを「バルさま」と呼び、
「バルさま降臨!!」とおもしろおかしく書いている。
私は食い入るように画面をみつめた。
まず、熱い湯で半身浴して、体をあたためて
代謝をあげたあと、布団に入り下半身を温めながら
腫れている側を下向きにして横に寝る。
と、朝起きたら、足の股の圧によって自壊していると
書いてある。
そんな簡単に自壊するのという疑問はさておき、
腰湯は熱ければ熱いほどいいと書いてあったのは、
大発見であった。これまで熱いと負担かなと
ぬるま湯にしていたのだ、よし、さっそくやってみよう。




その日2度目の漢方デミタスを味わったあと、
「ううっっ、ううっ、いたぁい、いたいよぉー」
頭をかきむしり叫びたくなるほどの激痛の山を乗り越え、
股をくっつけたまま、足を1ミリずつ
摺り足でひきずり、風呂へ。
寝室と台所、玄関、風呂、仕事部屋。
いつも軽々と走り回っている家の中を移動するのが
こんなにうらめしいと感じたことはないが、
もはや使えるもんは何でもつかえと、
スイッチを押す時は長い棒を使ったり、
体に振動をあたえないように軸足をすえて平行移動したり、
自分なりの工夫もちらほら。
自分の持てる機能を使い、できる範囲でどう動き、
日常を過ごすか。どんな逆境にあったとしても
これならば何とかなるという方法を
人はあみ出すものである。




熱い湯、正解でした!
炎症の熱と熱い湯がとけあって、本当に楽。
ちょうど図書館から借りてきていた小説を
読みながらあたたまり、また激痛の旅をへて寝室へ。
しかし、横向きに寝るくらいで自壊できるとは思えない。
こだいら薬方堂の体験者の話を読んでも
自壊したのは薬をのみはじめて10日後とか
2週間後とか書いてあるのだ。
そんな長期間にわたって、この頭が狂いそうな
激痛に耐えられるわけがない。
それに仕事もある。



と、そんなとき、私のブログを花の都パリから
時々のぞいてくれる同業者の安田さんが
「馬油ありますか? 昔の純度の高いピュアな
馬油をぬると炎症もしずまるし、いいですよ」との
ありがたい情報を送ってくれた。
ははあ、オイルかあ。
殺菌系のものにしか頭がいかず、オイルの存在を忘れていた。
馬油はないけれど、そういえば愛用している
シリーズのオイルがあったはず、
ついでに妹からもらったココナッツオイルや
椿油もあったよね。洗面所からかきあつめたオイルを並べ、
決死の思いでベッドに寝転び、患部にぬってみたところ、
これまで触れるのも怖かった患部表面に膜がはられた
おかげか、指先で状況を確かめられるようになったのだ。
嬉しい、触れるじゃないか!
バルと私のキョリが縮まったという感じ。
月面着陸したかのような、大きな一歩。

そこから、私は弱った気持ちをたてなおし
「いける!いや、何としてでも
自壊というやつを体験して自力で治す!」と
自分で自分に言い聞かせて、覚悟を決めた。
病を治すのは、薬でも、医師でもない。
自分自身なのだ!!
一日3回の漢方デミタスという味方もついているし
大丈夫、きっと乗り越えてみせる。



私はオイルをたらしながら患部に手をあて
まだ痛みや腫れの少ないところを指で
じわじわと押してみた。
い、い、痛い。痛いけれど、前にすすんでいるという
手ごたえがある。と、しばらくして薄い血が
少量出てきたので おおっ、これが自壊(強制的な)!?と
喜んだが どこからでているのかもわからないし、
一気にぶしゅーっと膿が出てくれるわけでもない。
全身に冷や汗をかきながら
じわじわじわじわと押し出していってようやく
少しは膿らしきものが顔をだした。
もう全身、汗。
気がつけば、格闘をはじめて
5時間が経過していた。
膿が少し出たぶん、だいぶん楽にはなったものの
痛みが消えたわけではない。
鏡で患部を確認したところ
いちばん皮膚が薄く赤くなっている腫れの中心部は
残ったまま。起き上がると、ズキッと痛む。
手強いけれど、この膿の山をくずさねば
普通の歩行へはたどり着けない。
が、今日はこれまでと横を向いて就寝した。


翌朝、すこーしだけ膿がでていたので、
腰をすえて膿出しに専念することに。
赤い腫れを外側からじわじわじわじわと
押していくと、指の腹にプチプチとした手ごたえを感じ
3箇所くらいの穴ぼこが空き、そこから膿がぷっくり。
よっ、待ってました!
じわじわじわじわ押していくと、なんとある段階にきて、
膿がだらーっと大量に出てきたではないか。
わあー、嬉しい、やったやった!
そう、ここが山場、バルさま除去のハイライト!
辛抱強く膿を根こそぎ、とれるだけ、排除。
布団のまわりは思春期の少年かという
ティッシュの残骸だが、それすら誇らしい。
よし、膿さん、さようなら。



膿がなくなったら、今までの激痛は何だったの
というくらい痛みが過ぎ去り、
普通にテクテク歩けるようになった。
普通に歩くって、こんなにも楽でありがたいことなんですね。
台所や風呂にも簡単に行ける、
猫にごはんをやるときにかがむのだって、
こんなに楽ちん。
この2日間、生きた心地がしなかったが
漢方薬が体に入りやすいように
また治癒にエネルギーがいくように
食をかなり細くしていたので体重も減った。
同じ病の経験を持つ母親に
「子どもは産んでないけど、膿は自力で出したよ」と話すと
「うみだした、まさにねえ」と大笑い。
これからは漢方を続けながら、体を温めて、
体質改善と基礎体力をつけるべく対策をしていきたい。


今回、出張の予定もキャンセルさせてもらい、
治療に専念した。家の中ですら満足に歩けないのだ、
参加しても迷惑になるだけ。
社会人として申し訳ないことではあったが、
我慢できる範囲をこえていたので、欠席させてもらった。
つくづく健康あっての毎日であり、仕事だなあ。
普通に生きていられることがまず大切。
体力づくりしなきゃなあ、お酒も控えめにせんとな。
40代の洗礼、バルトリン腺炎の激痛の旅は
こうして幕をとじたのである。

それではまた明日。



                     (編集発行人:コサカ)







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