編集発行人 コサカが贈る勝手きままな
つれづれ日記です。ハッピーな日もブルーな日も
美味しい珈琲で、一息いれてください。

11月11日 大坊勝次さんの話 後編 



トーク前編は、こちら。


小坂
:初めて対談した時、私が撮った写真があります。
これは2013年に岐阜の熊谷守一美術館に行かれた時でした。
これは、 森光さんの丸い帽子をかぶった大坊さん。
貴重な写真です。(会場笑)。






小坂
:帽子のお礼に大坊さんが升たかさんのデミタスカップを
森光さんに贈られたんですよね。
大坊:今、珈琲カップに女の子の絵が描いてあったと
思うんですけど、この絵は中近東美術館に行きますと、
こういう絵の何かがあるんです。たぶん升たかさんは
そういう絵を題材にして珈琲カップの絵を描いていると思います。



小坂:この時は、惠子さんもいらっしゃって。
ふたりで、大倉陶園のカップっていいんだよねって
話をしていましたね。
大坊:ふっ(自分の写真をみて笑う)。
小坂:大体、大坊さんは熱中すると、
前屈みの姿勢になることが多いんですけど。





小坂:対談では、モリミツ理論がいっぱい出てきましたね。
大坊:これは、彼が色彩論の熱弁をふるっているところです。




小坂:大坊さんが森光さんといっぱい話したのは、
この時が初めてだったと思うんですが、
お話してみてどういう感想を持たれましたか?
森光さんと自分というのは。
大坊:まあ、長い間同じようなことをやっているわけだから、
何でも話せるっていうふうに思っていたんだけども、
ふたりはまったく違うということに気がつきました。(会場笑)
小坂:あの、話すテンポから違いましたね。
大坊さんがお店を辞められたばかりで、私としては
じっくりお話を伺いたいなと思っていたんですが、
大坊さんはお話する時に間がありますよね。
大坊:はは、間っていうか。
小坂:何か喋ろうとする時に考えて口を開こうとした瞬間、
森光さんが喋り出すみたいな(会場笑)。
ちょっと待って欲しいと思ったことを覚えています。



大坊:先程の映像のインタビューに答えた話でも、
森光さんの話っていうのはいいですね。
確信に満ちてますね。感動は初めてで一回しかないんだ、
初恋と同じなんだと確信に満ちてますね。
私はまずそういうことに確信は持てないですね(会場笑)。
確信・・・。
小坂:でもずーっと手廻し一筋ですよね。
ご自分のスタイルを変えなかったのはどうしてですか。
大坊:それは商売というのは毎日毎日続けることですし、
毎日毎日当然焙煎しなければいけませんし、
それは毎日イヤでもやらなきゃいけないことで、
やらざるをえないことであって確信とは違うと思いますが。
決してみんな手廻しでやらなきゃダメだよってことは
一度も言ったことはありませんし(会場笑)。
小坂:ネルドリップもそうじゃなきゃ
ダメだっていうようなことは、大坊さんは言いませんよね。
大坊:ええ、そうですねえ。


小坂:今、大坊さんはお店はないわけですが、
それでもずっと珈琲と関わってこられていて、
辞めてから思うこと、珈琲というものに対して
自分の向き合い方というのは変わったんでしょうか。
大坊:ええ、それはまったく。
まあ、これも断定はできないけども、私と森光さんの
いちばん大きな違いっていいますか、それは、その
彼は、珈琲が珈琲なんです。私は珈琲店なんです。違う?
小坂:どうぞ、もうちょっとお話を。
大坊:・・・うーん。さっきの映像で森光さんが
色彩論を話しているところだってありましたし、
彼は音楽が好きですから音楽の話もものすごく詳しくて、
そういう話を始めるわけです。
で、それがたぶん珈琲に結びついていくんだなと思って、
私は一生懸命聞いているんですが、なかなか珈琲に
いきつかない。(会場笑)
で、さらに音楽の理論を追究して話していくんです。
それは音楽の法則といいますか原理といいますか
摂理といいますか、そういうふうなものを話していくんです。
でも珈琲には辿り着かない状態のまんま
終わってしまうこともあるんです。
もちろん色彩論の話、ゲーテの話、
いろんな話をするんです。
もっとワケのわかんない話もするんです。
でもそれもいつかは珈琲の話に結びついていく
んだろうなあと思ってるんだけども、彼にとっては
そのこと自体が珈琲なんです。
確信をもっているがゆえに、そういうことができると思うんです。
で、ちょっと話していいですか。
小坂:どうぞどうぞ。



大坊:私、西脇順三郎という詩人が好きでして、
彼の詩のいちばん最初に出てくる言葉にこういうのがあるんです。
まあ、私はそれを読んで西脇が好きになったわけですけども
「覆された宝石のような朝」という一行があるんです。
「覆された宝石」というのを皆さんイメージしてみて
欲しいんですけども、宝石がある、光っている、
これが覆されたってことは、こちら側が宝石の中にいると
いうことになりますね。彼は、それなんです。
珈琲がある。珈琲に対して語っている自分とか、
自分が好きな音楽とか絵画とか文学とかいろんなものがある。
まわりのこれがもう珈琲なんです。
ですから我々がいつか珈琲に辿り着くと思っているけれども、
彼にとってはこれが珈琲なんだ。
そういうふうに考えると、なんて言うんだろ、
すべてが、森光さんの話すこと行動すべてが・・・
なんて言うんだろ、あのお、まあ、
変な言葉を使うかもしれないけど、愛おしくなっちゃうんですよね。
珈琲を一緒にやる者として。
愛おしいなんて言葉使って悪いね。



小坂:ああ。もっとこんなこと話せば
良かったというのはありましたか。
たとえば大坊さんは珈琲屋をやるって自己表現だと思う?と
お尋ねになりましたね。森光さんはわかんないけどねと
言ってましたけど。
大坊:私にとっては、珈琲を作って店で珈琲を出して飲んでもらう。
で、飲んでくれる人が大事、っていうか、
もちろん森光さんだってそうだと思いますけども。
その、その人がここで過ごす時間をどういうふうに
過ごしているんだろうなあってことが気になるんです。
でも森光さんは、森光さんと珈琲を飲む人がいて、
珈琲を介して、珈琲が終着点というか、なんていうんだろう、
目的というか。もちろんその先に珈琲の神様がいると思うけども
そういうことなんです。
どっちかというと、私は珈琲を飲むことによって、なんて言いますか、
叙情とか、そういう人間の心に湧く何かの方が大事って言いますか。
ですから、いろんな音楽理論を話したり、色彩理論を話したり、
そういうことを話すのは、珈琲というものをある意味で
言語化して、ひとつの、なんて言うんでしょうね、
何かを確立したかったんだと思うんです。
それを彼は美美珈琲で確立したかったし、もしかすると
福岡という街においてそういうものを確立した
珈琲論を実現したかったんじゃないか。
そういうふうにも考えます。


小坂:そうですね。実際に福岡という街は、
森光さんやそのほかの先輩がたと30、40代の珈琲屋さんとの
つながりもすごく密で、12月にもコーヒー文化学会の
イベントも開くんですけど、やっぱり森光さんは
自分がやっていることがそれで終わりではなく、
後世に伝えていくってことをすごく大切にされていましたよね。
大坊:対談の途中だったんですけども、
私が店をたたまなければいけなくなった時、
もう当然のように次はどこでやるのか、いつからやるのかと。
いや、俺は辞めるって決めたんだと言っても、
森光さんは全然信じられない様子でした。
当然、あの人の場合は、私と同じように店を辞めなくては
ならなくなったらば、すぐに別の形で始めるんだと思います。
私は、始めませんでした。
ですけど「美美」は、奥様がすぐに始められました。
それは本当に良かったと思います。
さっき森光さんの映像が・・・・・・
流れましたけども、もうそろそろ一年だなという気持ちと、
あんなにニコニコして元気で、まだ元気でいるような
感じになっちゃいますね。



小坂:こういうイベントもそうですし、今、おかげさまで
「モカに始まり」という森光さんのただ一冊の本の
再販プロジェクトが動いていまして、
インターネットのクラウドファウンティングの支援を
いただいているんですけど、その締め切りも
今日の夜11時までなんですね。
だから森光さんはいらっしゃらないんですけども姿としては、
でも、すごくこの辺にね。
大坊:そうです。「覆された宝石のよう」ってことは、
もう音楽が始まるにしろ、皆さんのまわりに
森光さんがいるんじゃなかろうかと思えてきます。
小坂:じゃあ、そろそろ時間になりましたけども、
大坊さんから最後に何かこう一言。
たとえば今日は珈琲屋さんも多く集まってらっしゃると
思うんですが。
大坊:いえ、あの、つまらない話をすみませんでした。
お待ちかねの音楽の時間に移りたいと思います。(会場爆笑)
小坂:(予想外の大坊さんのアナウンスに爆笑しながら)
じゃあですね、お店の営業っていうのは、今後は?
大坊:ええ。
小坂:ないですか。
大坊:ええ、ない。ですから、あの、流しで。(会場爆笑)
小坂:どこかで見かけたら、ぜひ大坊さんの珈琲を飲んでください。
今日は、ありがとうございました。
大坊:ありがとうございました。



  〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜


テープおこしをしての反省。
打ち上げで充子さんに言われたように、
前半は、もうちょっと大坊さんの次の発言を
待ってあげたら良かった。
なのに挟んでしまった。
森光さんに待たないとか言って、私も同じじゃないか(笑)。
つい、時間がないと、焦ってしまった。

まあ、でも待てなかったから生まれた展開も
あっただろうし、待ったら待ったで有意義な話になった
だろうし、どちらにしても結果OKということにしよう。
大坊さん、心に残るお話をたくさんいただき、
ありがとうございました。
それではまた明日。

                   (編集発行人 コサカ)



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