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2012年8月7日 胃瘻事故抜去対策法

胃瘻の患者に時々起こることとして、胃瘻の事故抜去があります。手を動かせないALS患者さんには生じにくい現象ではありますが、それでも比較的初期の段階や、他の疾患ではそう稀ではなく生じる事態です。とくに在宅でこれが起こった場合、対応が遅れると、新たな胃瘻を造設しなくてはならないようなことに追い込まれかねません。そのような事故抜去に対して、当院の行っている方法をお示しし、皆様のご参考に供したいと思います。

まず、事故抜去を起こしてすぐの場合は、簡単です。同じサイズか、それが無理なら一段小さなサイズの胃瘻カテを入れれば事がすみます。とくに手技は必要ありません。医療用のゼリー剤で入りにくい場合、サラダオイルなどで濡らせば入りやすくなります。そのために胃瘻は1サイズだけでなく、少し小さめのサイズも揃えておいたほうが安全です。普段は20Frを使っていても、1816Frのものを用意しておくと安全です。もしそれまでボタンタイプを使用していた場合は、しばらくはカテーテルタイプで代用してください。閉じかけた瘻孔を入れる場合は、ボタンよりカテの方が安全に入れられるからです。

問題は抜去後時間がたってしまったときの対応です。胃瘻孔は、抜去するとどんどん縮んでゆきます。抜去に気づかず2〜3時間も経過すると、瘻孔はかなり小さくなり、通常の胃瘻カテーテル(先端が平たいもの)は挿入することができなくなります。そのような事態にまずしていただきたいことは、

吸引カテーテルを突っ込む

ことです。12Frでも10Frでもいいですから、気管や口腔吸引用に使う吸引カテーテルを胃瘻の閉じかけた孔から中に入れてください。それも10cm以上しっかり入れて、できれば注射器で逆流を確かめてください。これが可能であれば、胃瘻は確保されます。

もし吸引カテーテルが入ったら、ここからはDrの仕事になります。次にすべきは、

ガイドワイヤーを吸引カテを通して胃の中に入れる

ことです。そしてガイドワイヤーを胃内に残して吸引カテを抜き出し、今度は先端のテーパーされた細い尿道用バルンカテーテル(12Frくらい)を、

先端を少し切ってガイドワイヤーを通せるようにし、それをガイドワイヤーにそって胃内に入れる

ようにします。とりあえずこれで胃瘻の代用として、水分、栄養の確保は可能です。短期間ならそのままでもよいですが、尿道用カテは先端がやや固めで、胃壁を傷つける可能性があります。そこで安全のためさらに胃瘻カテーテルに交換するためには、次の手技に移ります。ガイドワイヤーはそのまま胃のなかに残しておきます。次は、今入れた細いバルンカテーテルの

バルンを瘻孔の位置に置いて、水を入れることによりバルーンを拡張させ、瘻孔を広げる

という操作を行います。これを何度か繰り返し、閉じかけた瘻孔を拡張することができたら、

ガイドワイヤーにそって16Frくらいのサイズの胃瘻用カテーテルを入れる

と成功です。あとは胃瘻の交換のたびに少しずつ大きな胃瘻カテーテルに変更(同じようにバルンを膨らませてから交換するとスムーズです)して元のサイズに戻してゆきます。これらの作業は、安全性は確保できていますから在宅やベッドサイドでも可能です。まず吸引用カテーテルで胃瘻の開存を確保していただくことが何より重要なのです。

しかし、もし、瘻孔がほとんど閉塞して吸引カテさえ入らない場合は、残念ながら現場では作業が困難(というか危険)です。その場合は、

レントゲン透視下で、ガイドワイヤーを胃内に入れる

という手技をしなくてはなりません。瘻孔の破れた部分から腹腔内にガイドワイヤーが迷入させることがないよう、ここはきちんと透視をしながら入れる必要があります。ガイドワイヤーが入りさえすれば、あとの手順は先ほどと同じです。

以上、私が行っている胃瘻事故抜去対策をお示ししました。おそらく多くの施設でそれぞれ工夫して対策法を作られていると思いますが、参考になれば幸いです。胃カメラによるPEG造設が出来るようになったとはいえ、再造設は患者さんにも大きな負担をかけます。できればそれは避けたいものです。以上の手技を行えば、ほぼ100%、胃瘻カテーテルの再挿入が可能ですので試してください。