かわら版 平成22年5月6日号



知覧特攻基地戦没者慰霊祭においての慰霊の言葉

平成22年5月3日(月)に鹿児島県南九州市の知覧特攻観音堂前で行われた
『第56回 知覧特攻基地戦没者慰霊祭』に参列いたしました。
我々を代表して陸軍士官学校での57期の同期生である堀之北重成氏が「慰霊の
言葉」を捧げておりますので、ここに掲載いたします。
堀之北君が心魂込めて作成したのですが、本人は病気入院中の為、惜しくも出席
出来ないので、代わって同期生の矢崎君が代読しました。 各方面から多くの感動
の言葉が寄せられました。

   第56回 知覧特攻基地戦没者慰霊祭においての慰霊の言葉

                                    平成二十二年五月三日

 本日ここに、第五十六回知覧特攻基地戦没者慰霊祭が行われるに当たり、財団
法人偕行社 並びに陸軍士官学校第五十七期同期生会を代表し、知覧特攻平和観
音堂に祀られる一〇三六柱の御霊の前に、謹んで慰霊感謝の言葉を捧げます。
 今から六十九年前、自存自衛の為に始まった大東亜戦争の末期、沖縄周辺海域
において、陸海軍の特攻攻撃が行われ、ここ知覧からも、若くて純真で、才能豊か
な特攻隊の諸兄が出撃され玉砕されました。
 私は、一緒に肩を並べ、学び訓練した諸兄が、笑顔で「次は靖国で会おう」と別れ
の言葉を残して出撃されたことを、今でもはっきり憶えており、燦々と輝く勲功ととも
に忘れることはできません。
 しかし残念ながら、戦争に負けました。
日本は、連合軍に占領され、独立を失いましたが、八年後には回復しましたので、
憲法と折り合いをつけて、日米同盟を結び、自衛隊をもうけ、戦争をしないで、国を
守るため、精強な防衛力を目指し乍ら、経済の復興に努めました。今では世界の中
で、稀に見る豊かな国になりました。日本には、食べ物、水、電気が豊富で、義務教
育や、健康保険制度等が整い、グローバル化した経済や、進歩した技術社会の中
で、人々は中流意識を持ち、金儲けに走るなどして、この豊かな生活に満足してい
ます。
 また、一方において、連合軍は厳しい枷をはめて、日本を弾圧しました。中でも人
間づくりの寄り所としている日本歴史の否定、人権にこだわり、人間性を無視した間
違った教育が行われ、日本精神が萎縮しました。一番無くなったのは、勇気だと知り
ました。
 勇気は、勇ましいとも言いますが、日常不断、本当の事、善い事、美しい事の為、
こうしなければならないと決心し、自分との戦いに勝とうとする情熱です。勇気は人
生に必要なものですから、なくなる影響ははかり知れません。
 自分で決心することが出来なくて、こうありたいと望む幸せや、生き甲斐を、自分
で発見できない人がいます。他人と違った判断が出来なくて、大衆の目に合わせる
人もいます。
 日本という国は、こうあって欲しいという希望を自分で決心できなくて、国は悪者、
個人と国は対立するものと決めて、国の事を言わない人がいます。
 善いことをする情熱を失い、道徳の無い経済行為、良心のない快楽主義、労働の
無い収入、強盗殺人等、不正が絶えません。
勇気なくして、一番残念だったことは、生き延びる力が無くなったことです。
戦後、日本は、日本の安全と生存を、大陸四ヶ国に任せて仲良くしてきました。しか
し、大陸四ヶ国は日本の期待を裏切り、今でも国境での争いは絶えません。生き延
びる力をなくした日本は、自衛隊の駐留を望む島民の皆さんの願いをかなえようと
しません。島民の皆さんは、いつも侵略の恐怖におびえています。
 ところで、隊員諸兄は、国の為、愛する人を守る為、死を恐れず、優勢な敵を目が
けて、飛行機もろとも突っ込まれました。その勇気に感動し、その強烈な個性に、多
くの人が畏敬の念を起こしました。これは隊員一人一人の諸兄が、身に付けられた
高貴な魂の仕業でした。人が人の為に死ぬ、これより美しい愛はありません。
 隊員諸兄が、この崇高な美学を身につけられたのは二十歳前後。しかも特攻隊と
いう戦わざるを得ない運命を知って一年足らずの間でした。この魂の高貴さが、あの
悟りを開いたような神々しい顔写真となり、何度読んでも胸を打つあの立派な遺書を
書かれたのです。私は、全国民がこの高貴な人生を賞賛しなければならないものと
思っています。
 戦後、占領軍は宗教も弾圧し、戦没者の慰霊も禁止しました。この弾圧は日本が
独立を回復したときになくなる筈でしたが、半世紀以上たった平成二十年五月にな
って、政府は正式に公表しました。
 しかし、今でも、戦没者と国や政府とのかかわりはありません。このかかわりは、
国と国民の間の戦前の約束でしたから、戦没者の慰霊、墓地の美化・保存を国の
行事としている外国と同じように、日本も改善していただきたいと願っています。
 知覧町におかれましては、いち早く、平和観音堂を作られ、隊員諸兄の御霊を祀
り、高貴な人世と名を伝えていただき、有難く深く感謝いたしております。
 私共は、隊員諸兄の高貴な御心を、子々孫々に伝え、精神的にも道徳的にも、誇
りある国にしなければならないと思っています。どうか私共の生き様も御照覧・御指
導いただき、そして安らかにお眠り下さいますようお祈りお願い申し上げ、慰霊の言
葉と致します。
                             平成二十二年五月三日

                        財団法人 偕行社 並びに
                        陸軍士官学校第五十七期同期生会
                          代表  堀之北 重成
                               (元防衛大学校教授)