サイクルマラソン阿蘇望参加レポート(前編) 2001年7月22日(日)

熊本県の阿蘇を舞台に開催される「サイクルマラソン阿蘇望」は今年で4回目を数えます。
夏の強い陽射しに晒され、豪快な峠を次々と越えてゆくこのイベントは
「日本一ハードな大会を目指す」というスタッフの言葉に違わぬ過酷なサイクリング大会です。

7月22日、夜明け前。

すでに前夜のうちに自転車だけは車に積み込んであって、準備は万端。
着替えを詰め込んだバッグを放り込み、午前3時半過ぎに家を出発しました。

この大会に参加するのは、今年で4回目。
去る1998年のツール・ド・国東の受付時に渡された封筒の中に
第1回サイクルマラソン阿蘇望の大会要項が同封されていたのを見つけ
「こんなオモロイ大会、参加しないワケにはいかん!」と申し込んだのが始まり。以来、ヤミツキです。

それにしても、今年はどの自転車を使うかで大いに迷いました。

いや、「どの自転車を」という表現は正しくないですね。正確には
昨年末に購入し、部品交換によるチューニングを重ねてきたシクロクロスバイクを
ここで過酷なサイクルマラソン阿蘇望に登用しても大丈夫だろうかと悩んでいました。

現時点でやれる事はすべてやったとは思う。でも、何かが足りないような気がする。

自転車をじっと見つめながら、考えてみました。
足りないもの。やり残したこと。自問自答は、およそ一週間にも及んだでしょうか。



たとえば、キチンと仕上げられた自転車は、乗り手のもつ力を100%結果に結びつけてくれる。
今この自転車に欠けている点があるとすれば、乗り手の力を超えた
101%、102%の結果を引き出してくれる魔法のようなものが、無い。そんな気がする。

魔法は、乗り手の心に効く。「もっとやれるはず」と乗り手の心に暗示をかけてくれる。

その魔法の正体を掴めぬまま、数値的には十分なスペックに仕上がっているはずの
シクロクロスバイクを、最も過酷なフィールドテストにかけてみることにしました。
走ってみれば、何が足りないのか、何をやり残しているのか、それが判るかも知れない。

複雑な思いのまま、午前6時半を過ぎて会場のテクノリサーチパークへと到着しました。



会場にはすでに多くの参加者が到着しているようでした。私も到着するなり直ぐに自転車を下ろし
準備をはじめます。タイヤに空気を入れ、敷地内をゆっくりと走りつつ、メカの調子を確認。

たまたま隣に車を止めていた方が、私と同じく大分県から参加されているとのこと。しかも
私が以前乗っていたものと同型のロードフレームを使っていて、しばし話に花が咲きました。
まだ午前7時前だというのに気温はかなり上がっていて、互いに顔を見合わせて「暑いねえ」と苦笑い。
今年のサイクルマラソン阿蘇望は、過去最高(=最悪?)の気象条件となりそうです。



午前7時を回ったので、会場へとハガキを持参して受付を済ませます。
今年、Aコース(4峠、130km)は400名を越えるエントリーがあったようですが、大会のパンフレットに
こんなデータが掲載されていました。

Aコース  初参加188名  2回目102名  3回目71名  4回目35名  不明5名  計401名

ちなみに、過去の大会の参加者名簿を見ると
Aコースについては、第1回大会は275名、第2回は360名、第3回は379名のエントリーがあったハズ。
このリピーターの少なさは....やはり、コースの難易度の所為でしょうね。
初めて地蔵峠をコースに取り入れた第2回大会では、完走率が7割を下回ったそうです。



午前7時半。開会式が始まりました。
以前、開会式で「日本一ハードな大会を目指す」と言い切っただけあって、この晴天にはスタッフも大喜び?
ダイナミックな4峠越えに加え、夏の強い陽射しが参加者を苦しめます。
ヨーロッパのクラシックレースには、「北の地獄」と呼ばれているレースがあるのですが
さしずめ、このサイクルマラソン阿蘇望は「南の地獄」というところでしょうか。あるいは「灼熱地獄」かな?
参加者の中には、開会式のあいだにも陽射しに耐えかねて
木陰に逃げ込んで話を聞いている人たちもいました。暑い暑い。



昨年までは、これが雨に打たれながらだったり、今にも降りだしそうな空模様を伺いながらだったりで
結局どっちに転んでも気が滅入りますね。カメラを持ち歩く分には晴れてくれる方がアリガタイですけど。

開会式が終わると、いよいよスタートの準備。時刻は予定より10分遅れて
8時10分から、ゼッケン順に70人づつのスタートです。
昨年は、開会式の後にトイレに行こうとして行列に並んでたら、危うくスタート時刻に遅れそうになりました。
その反省もあって、今年は予めトイレを済ませていた私。カメラを片手に出発前の皆の表情を伺います。



思うに、こういう参加者の多いイベントでは簡易トイレを設置して貰えると
ずいぶん助かるのですが、いかがなものでしょうね。
なんにせよ、ここテクノリサーチパーク内にはトイレが少ないです。トイレ紙も要持参。お気をつけあれ。



刻々と迫るスタートを待つ参加者、それを見送る後発の参加者。
Aコース、Bコースとファミリーコースの全部で総数500名を超える人の数。なんとも賑やかです。
やがて、先導役のバイクがゆっくりとスタートラインの前方に陣をとりました。



沈黙。やや緊張したような空気。それは、ゴールタイムへの拘りか、はたまた完走を危ぶんでの不安か。



県内最大?のサイクリングイベントとあって、マスコミ各社がカメラを構えています。
Aコース約400名の参加者のうち、半数近くが今年初参加。みなさん、どんな心持ちなんでしょうね。
私は、もうどうにでもなれというか、行ける所まで行くしかないといった開き直りの気分です。
今年4回目の参加、しかも過去3回完走しているのに、それでも完走には不安がつきまといます。
いまでも「挑戦する」という気持ちで臨める数少ない大会ですね。



スタッフの号令の下、いよいよスタートです。ふと、まわりの参加者を見ると、まだまだ余裕の笑顔ですね。
はたして、ゴールまでその笑顔を絶やさずに走りつづけられるか否か?



しばらく平坦な道が続いた後、緩やかな登り坂に差し掛かります。
私が先頭ランナーの姿を見たのは、ここが最後でした。
彼らは、いったいどんなペースでこのコースを回るのだろう?
視界の彼方へと消えてゆく背中を見送ります。

 

ほどなくして、目の前にかなり勾配のきつい登り坂が出現しました。
いよいよ第1関門の「地蔵峠」の始まり。のっけから容赦なく10%前後の登り勾配が続きます。
ここで、すこし私も顔色を無くしました。

陽射しが強いというだけで、こんなに体感が違うものなのか?



昨年、一昨年は、このあたりで雨がパラついているか曇りがちかという天気だったので
今年ほどの強い陽射しの下でこの地蔵峠を登った事が、無い。一気に体温が上がり、汗が吹き出す。
なんだか、すでに2つ目か3つ目の峠を登っている気分だ。
ボトルに手を伸ばし、こまめに水を飲む。腕が日に焼けて見る見る色が変わっていくのがわかるような気がする。
この時点で、「完走」という言葉は私の頭から消えてなくなりました。



地蔵峠を頂上近くまで登ると、最初の給水所がありました。やれうれしやと、転がり込んで一休み。
腕や脚に水をかけて冷やし、ボトルに冷たい水を詰めなおしてもらいます。
給水所の奥には、飲み物の冷却用?に幾つもの大きな氷の塊が並べられていて、見るからに涼しげ。



さて、コースはまだまだ序盤、先は長い。早々に給水所をあとにし、再スタートを切ります。



エイドを後にしてほどなく、目の前に下り坂10%の看板。しかし、この地蔵峠は
頂上付近で何度もアップダウンを繰り返しているので、ヌカ喜びは禁物です。
スタート前にリセットしておいたサイクルメーターに目を落とす。



頂上付近のアップダウンが終わるのは、確かスタートから22〜23キロほど刻んだ辺りのはずだ。
自分に言い聞かせます。不意打ちの登り坂ほど精神的ダメージの大きいものは無いですからね。



やがて、湧水で知られる南阿蘇に向けて最後のダウンヒルにさしかかりました。気分は爽快!




10%、11%という急勾配に初めて挑むシクロクロスバイク。
ブレーキの効き具合も、操舵性も、その限界点は全くの未知数。よくこんな自転車を持ち込んだものだ。
ひとつひとつ、カーブを曲がるたびに探るようにして自転車の性能を試します。



ようやく自転車の操舵性に慣れたかと思った頃には、もう外輪山を下りきっていました。
ふと見上げると、阿蘇の中岳をはじめとする山々が正面にそびえています。
あの向こう側へと、これから越えて行くのか。笑っちゃいそうな、ホントの話。冗談みたいなイベントだな。

ふと、道路の反対側に数人の参加者がたむろっているのが見えました。なんだ?




どこかで見た場所だと思ったら、南阿蘇湧水群のひとつ、「池ノ川水源」でした。
これはツーリストとしては立ち寄らんワケにはいかん。冷たく清らかな阿蘇の自然にノドを鳴らします。



あまりの心地よさに、そのまま居座ってしまっている参加者もチラホラ。....完走、諦めたの?



池ノ川水源からしばらく走ったところで、2つ目の給水所がありました。ここは阿蘇登山道吉田線。
通過チェックをしてもらってから、またここで飲み物をもらって一休み。
さっき水源で水を飲んだばかりだけど、休む所ではキッチリ休んでいこう。先は、長い。





さて、2つ目の峠、阿蘇登山道吉田線に取りかかります。ここは3本ある阿蘇の登山道の中でも
比較的緩やかな道で、ロードレーサーのギヤでもそれなりにスルスルと登れてしまう楽な道です。
いかにも阿蘇らしい風景を楽しみながら、のんびりと登る事にしました。



そろそろ、後ろから知り合いのサイクリストが追いついてくるはずだ。彼の健脚ぶりからして
草千里まで逃げおおせるとはとても思えない。



無理はせず、耽々とペダルを漕ぐ。気がつくと、いつもより一段軽いギヤを使っている。
やはり今日は脚の調子もよくないようだ。この分だと、復路の地蔵峠は越えれられそうにないな。
3つ目の箱石峠までがせいぜいか?



だましだまし、登山道を登りきって3つ目の給水所が見えてきました。草千里の少し手前にある
グラススキー場です。ここまで来れば、あとはこの先を下れば昼食会場。ホッとひと安心。
ここで、知り合いのサイクリスト数人と居合わせたのですが、ここから事態は思わぬ方向に....



物語は急展開を見せ、後編へ....

(つづく)


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