くじゆう登山

           歩道 田辺誓司

小春の日の暖かにくじゆう路へ誘ふごとく
秋桜がさく

検束に憂ひゐたりし過去もおぼろくじゆう
の登山路へ入る

まなさきに寥々として山笹とすすきの平あ
さの日に照る

思ほえぬ縁のありて集ひしが山を語らふと
きの親しさ

懸命に登るわれらのかうべをば撫づるが如
し天晴れわたる

日をふくみ白じろ光る穂すすきのたひら西
千里ケ原を歩む

せまりくる久住の峰を仰げれば青春とほき
ゆゑの寂しさ

背負ひたる大きリユツクの頼もしく無私に
行ふ奉仕の形

岩がちのみち辛うじて辿り来ていまし久住
の山頂に立つ

キムチ鍋チヤンポン鍋もみな甘しくじゆう
山気と山群の内


根子岳の鮫歯するどく眼前にくろぐろそび
ゆ初冬の空に

祖母山も傾山もちかく見えくじゆう山頂に
昼酒をのむ

山ゆけば人ぞ恋ほしも若き日に彷徨ひたり
しこと思ひつつ

高山の道のかたへに日もすがら融けぬ霜柱
しろく光れる

遠どほにみえゐる由布の山陰かわが故里の
両子嶺おもふ

ひたぶるに事務所経営に努めたる半年にし
て山へ来りぬ

あかねさす昼の山気に浸りなばけふ生きゐ
るをわれは喜ぶ

涸池の底ふかうして山下るわれらの声の届
くともなし

巡り会ひし人友となる山行の旅よかりけり
小春の日に

山下りし躰湯泉にしづむるに一日の疲れた
ちまち癒ゆる


                             TOPページへ