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OVersion April 2000

April 28
 ●ダンピングファクターの幻のナゾ
April 21
 ●逆輸入セヰコーファイブの品質のナゾ
April 14
 ●マクロな時間とミクロな時間(機械式時計は不正確か?)
April 7
 ●次世代メモリDRDRAM蹉跌のナゾ・その2(Rambusの帯域は本当か?)
April 1
 ●ボルスタレス台車のヨー特性のナゾ


OVersion April 2000


April 28
 ●ダンピングファクターの幻のナゾ

ご存じの通り、本ページでは山本式電流帰還アンプを提唱している。回路は図に示すように、スピーカーのグラウンド側に小抵抗を入れ、その電圧を帰還する。従ってこのアンプは入力電圧に比例した電流を常に出力することになる。正確には定電流ドライブ式アンプと呼ぶべきかもしれない。 このアンプのダンピングファクターが計算上ゼロになり制動力が全く無いのではないかという質問は当初から多くいただいている。しかし、この文章を読み終えたころには、あなたのダンピングファクターに対する考えも少し変わっているだろう。さて、ダンピングファクターとは何か。その近似式は、

DF=el/(e0-el)

である。ここでelは指定負荷(純抵抗)時の負荷両端電圧、e0は負荷抵抗無限大時の負荷両端電圧)である。真のダンピングファクターはスピーカーのインピーダンスをアンプの出力に直列の等価内部抵抗(インピーダンス)で割ったモノだが、それは実測できない。

そこでこの近似式では負荷に純抵抗を繋いだ場合と解放した場合の出力電圧の差を見てダンピングファクターを算出している。つまりスピーカーの逆起電力はインピーダンスのみかけの変化として現れ、それに対してアンプが一定の出力電圧を保つ能力がアンプのダンピングファクターと等価であるという前提にたっている。ところがご存じのように、スピーカーは純抵抗では無い。電流が電圧と同じ位相で流れる保証はまったく無い。

たとえばスピーカーが停止しているときと一定の周波数で振動しているときのインピーダンスは異なる。またパルス入力に対するスピーカーの過渡特性は悪く、振動が立ち上がっている過程での振幅は小さい。これが一定の周波数でスイープするF特性と実際の音源の再生が異なる原因の一つである。定電圧ドライブでは駆動電流は決して保証されないので過渡特性が良くない可能性がある。

さて、実際に電流帰還アンプでダンピングファクターを計算するとゼロもしくは計算不能になってしまう。それはこのアンプはスピーカーのインピーダンスにかかわらず常に一定の電流を流そうとするために、e0は無限大になるからである。

ダンピングファクターはスピーカーの逆起電力をアンプ出力の内部抵抗で制動(ダンプ)するという考え方にたっている。しかし実際にアンプから見るとスピーカーの逆起電力はそのインピーダンスのダイナミックな変動にしか見えない。従ってインピーダンスの変動に関係なく常にコイルに一定の電流を流すことにより一定した駆動力(=磁束密度*電流*コイル長)を実現する電流帰還アンプに制動無いというのも不思議である。

そう言えば真空管アンプのダンピングファクターは殆どが1以下、どうかすると0.1位である。とすると真空管アンプの音は制動が効いていないので聞くに耐えないのだろうか?そういう話は聞かない。

もうひとつ、ダンピングファクターの高いアンプはスピーカー側から見て内部抵抗が小さいことと同価で、高級アンプなら1KHzあたりで0.1Ω以下になる勘定だ。しかしスピーカーのボイスコイルの抵抗分が通常数Ωはあり、これに配線の抵抗が加わるので、アンプの内部抵抗が低くても直流抵抗が大きく実効ダンピングファクターは1以上になり得ないのである。つまりアンプのダンピングファクターなす数値は全く効いていない空疎な数値なのだる。

スピーカーの制動にとってダンピングファクターがすべてか?それは違う。いったいダンピングファクターとはナンボのものだろう。結論から言えば幻のような存在ではないかとWebmasterは考えるのである。

そもそも電圧帰還アンプの異様に高いダンピングファクターは負の電圧帰還が作るものだ。実際帰還量とダンピングファクターの改善は殆ど直線関係にあり、ダンピングファクターが1000のアンプなら60dB近い電圧帰還がかかっていると考えて良い。真に負帰還のまったく無いアンプ、もちろんそれはメーカーの宣伝文句とは異なり回路上あり得ないが、その場合のダンピングファクターは電源のレギュレーションの影響もあって小さくなってしまう。それを取り繕っているのが負帰還である。

さらにそのダンピングファクターが1000もあるのは1KHz付近であり、fo付近の低音や20KHz付近の高音では激減してしまう。つまり激高ダンピングファクターというのはボロなアンプでも負帰還という魔術で実現できる。巷で無帰還アンプ(低農薬野菜と同じく低帰還アンプと呼ぶべきだろうが)が、がもてはやされるのは、厚化粧をとった真の特性が問題になるからだろう。

つまりダンピングファクターを稼ぎ出すのは電圧帰還そのものであり、通常の電圧帰還アンプでは当然ダンピングファクターも高くなる。しかしスピーカーを流れる電圧と電流は位相が異なるので、電圧を元に負帰還が作り出した仮想的なアンプの内部抵抗も位相特性を持っている。つまり仮想的なアンプの内部抵抗の位相特性とスピーカー電流の位相特性が同じという保証はない

ではダンピングファクターと駆動力、そして制動力との関係な何か。少なくとも純抵抗でなくメカ部品であるスピーカーの場合ダンピングファクターが制動力のすべてでは無い。上図の二つの回路を見比べて見ると、仮にスピーカーが純抵抗でその値が一定ならその動作は全く等価である。それでいて、片方はダンピングファクターが高く、片方は限りなくゼロなのである。

モーターなどの負荷を定電流ドライブする駆動回路は実社会では珍しくない。フロッピーやハードディスク、ビデオのスピンドルからモーター、工具、はたまたエレベーターに至るまで定電流制御されている。しかしビデオのスピンドル制御が定電流ドライブのため制動が甘くてテープが絡み付いた、という話は聞かない。印可する電圧と電流の位相が異なるモーター制御では定電流ドライブのほうが安定する。

電車の運転席を見てみよう。そこには架線電圧とモーター電流のメーターがあるがモーター電圧のメーターは無い。優秀な定電流ドライブアンプ?である運転士はモーター電流(=駆動力)を視覚と平衡感覚と使ってコントロールする。電車と同様にスピーカーの駆動力(=磁束密度*電流*コイル長)は電圧には一義的には関係しない。逆起電力もはその逆のメカニズムで発生し同様に一義的には電圧と関係しない。とすると、スピーカーは定電流ドライブすべきでは無いか。

リクツばかりを言ってもしょうがない。実際の音を解析してみよう。左は以前登場したことがあるのだが、同一ICを電圧帰還した場合(左上)と電流帰還した場合(左下)の出力音圧を示している。ソースの1KHz方形波の立ち上がりは高い周波数域を含んでおり、その領域ではスピーカーのインピーダンスが上昇し電流がながれにくい。電流帰還の方が立ち上がりが良いことがわかるだろう。

電流帰還アンプではインダクタンスをうち消すために立ち上がりに大きな電圧がかかりスピーカーに流れる電流はほぼ方形波になる(右下段)。スピーカーの動作が反映される出力音圧の立ち上がりも鋭くなっている。これはこのアンプが正しく定電流ドライブしているからである。

右上の図は電圧帰還アンプのスピーカー電圧を示しているが、方形波とはオーバーシュートとプラトーの下がりのため随分変形している。電圧帰還アンプは出力電圧も方形波になるハズなのだが、動作原理通り動いていない。それはスピーカーが純抵抗で無く位相特性を持つからだ。同時に負帰還と表裏一体のダンピングファクターも動作原理通り発生しているかどうか怪しい

次に問題は方形波のプラトー部分である。電圧帰還の音圧波形(左上)より電流帰還の音圧波形(左下)の方がプラトー部分が水平に近い。つまり電流帰還の方がスピーカーの動きを反映する出力音圧波形が原波形に近い。これはいったい何を意味しているのだろう。

方形波の立ち上がりは、スピーカーのコーンを急激に前方に押し出す。しかしコーンには慣性と固有共振周波数foがあるから、スピーカーの動きは遅れ、またプラトー部分になっても前に動きを続けようとするだろう。そしてその後はfoでリンギング状に減衰振動することになる。

本来ダンピングファクターというのは、このようなコーンのムダな動きを制御する能力の指標のハズである。ところが、ダンピングファクターの高いハズの電圧帰還アンプよりダンピングファクターがゼロなはずの電流帰還アンプの方が音圧波形を見る限り原波形に近い音を発生している。これはどうしたことだろうか。

どうやら電圧帰還アンプが発生する計算上のダンピングファクターと実際のスピーカーの駆動力と制動力そして位相特性の関係は単純では無いようである。ご存じのようにスピーカーを制動するのはアンプのダンピングファクターだけではない。電圧帰還アンプが計算上発生するダンピングファクターが本当にコーンの動きを制動するのにどの程度寄与しているのかますます疑問である。

さらにマルチウェイスピーカーで複雑なネットワークが介在している場合にはその直流抵抗により実際のダンピングファクターの効果は低下する。外国製高級スピーカーの中には巨大な別筐体のネットワークをもったものがあるが、おそらく抵抗分を嫌うために巻き線を太くしたところがそうなったのであろう。また高音域ではキャパシタンスの介在によりダンピングファクターの効果は殆ど期待できない。むしろ電流帰還アンプの駆動力のほうが遥かにメリットが出てくると考える。

こうこの点において、すべからく実践を尊ぶWebmasterは電流帰還アンプの計算上のダンピングファクター=ゼロ=ダメと考え、実際のコーン紙の動きがどうなっているのかなんか確かめないでよい、とする程度の低い無気力エンジニアとは一線を画するのである。計算式だけの世界では結局まともな音は鳴らない。

Webmasterが山本式電流帰還アンプに至った背景は随分前に書いた。オリジナリティーを最優先するWebmasterとしては、そのアプローチも、それを実現する材料もチープ(ラジカセ等)で独自な手法でありかつ地球にやさしい。ところが迂闊なことに、巷には金田式アンプというのがあり、電流帰還と電圧帰還をボリュームでミックスできる回路であることに気付いたのは、随分たってからであった。

チープな山本式電流帰還アンプは金田式とはアプローチが180度異なるが、結果的な動作としては遠くない。さらに電流帰還がモーター制御では普通なのに気付いたのはさらに後であった。

金田式アンプの回路を見るとボリュームにはダンピングファクターコントロールもしくはMFBコントロールと名付けられているが、Webmasterは以上の考えからそれが適当な名称なのか疑問を持っている。そして設計者がこのコントロールをアンプに付加した事実が、スピーカーの制御と純抵抗負荷から算出したダンピングファクターの関係が単純でないことを物語っている。Webmasterにはそのことが良く理解できるのである。

ところで、オーディオの世界にはスピーカーコードは細くて長いほど良い、とする奇特なユーザーがおられる。最初はまったく理解できなかったのだが、特定のアンプとスピーカーの組み合わせによっては、その方が音が良くなる場合もあるだろう。

つまりスピーカーにシリーズに抵抗を入れると定電流ドライブに近づき、またスピーカーの位相特性も見かけ上純抵抗に近づく。つまり定電圧ドライブのアンプ負荷の位相特性の条件が良くなる(純抵抗に近づく)可能性もあり得る。

とすると、定電圧ドライブを念頭に置いたダンピングファクターの計算は必ずしも定電流ドライブには当てはまらないとする考え方があっても良いように思う。そこで一つの考え方が電流ダンピングファクター((c) and PAT PEND.)である。電圧帰還アンプにおいて、定電圧ドライブで負荷インピーダンスの変化に対しての電圧を一定に保つ能力を示すダンピングファクターの計算式が、

DF=el/(e0-el)

なら、定電流ドライブに適した電流ドメインを指標とした電流ダンピングファクターがあってもおかしくない。それは、

DF=il/(i0-il)

と考えてみたらどうだろう。ここでilは指定負荷時のスピーカー電流、i0は負荷抵抗無限大時のスピーカー電流である。つまり、アンプがスピーカーの逆起電力によるみかけのインピーダンス変動に対して、どれほど定電流出力を保つ能力があるか、とする定義だ。定電圧ドライブでは電圧ダンピングファクターが、そして定電流ドライブでは電流ダンピングファクターがアンプの能力として適当なのかも知れない。結局スピーカーは電流で駆動されるものなのである。

ところで電流帰還アンプについては、たなかだてさんが実験されている。何個か虎の子AURATONEを焼損され、その後電流帰還を電流センサーを使って安定化されたとのことである。実に涙ぐましい話である。そこには電圧帰還と電流帰還のスピーカー駆動についての詳細な波形データがあるので、疑り深い方はぜひ参照されてほしい。

思えばWebmasterが安定な電流帰還アンプに簡単に成功したのは、素材が地球にやさしいチープなアンプICだったからだろう。つまり最初から超高音域がIC内部でカットされていたためである。従ってディスクリート素子で理想的に組まれたアンプでは、高音域の立ち上がりで大電流が流れるために、それなりの安定化策が必要だったそうである。その意味では山本式電流帰還は地球にやさしいチープなシステムにぴったしなのかも知れない。

最後にスピーカーと直列に入った抵抗の音質に対する影響を心配される方がおられる。この抵抗は帰還素子としてループの中に入っているので、動作上あってもなくても同じでゲインを決定する働きしかない。もしこれを気にするなら普通の電圧帰還アンプの出力素子のエミッター入っている0.1〜0.5Ωの安定化抵抗も気にしなければならない。これも局所的に電圧帰還として働くハズだが、アンプ全体が帰還ループに入っているためオモテに現れないのと同じである。

というわけで、この時点ではあなたのダンピングファクターという数値を見る目は少し変わったであろうか。結論を言えば、電圧帰還アンプが仮にカタログ値でダンピングファクター1000を発生しようとも、ネットワークとスピーカーケーブル、スピーカーのコイルを位相特性を持った電流が巡る間にその制動力は殆ど期待できなくなってしまう。しかし電流帰還のアンプの場合はその駆動力はいかなる場合にも必ず保たれるということだ。

究極的に、スピーカーの駆動力(=磁束密度*電流*コイル長)を発生するのは電流であって電圧では無いのである。

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April 21
 ●逆輸入セヰコーファイブの品質のナゾ

国内メーカーS社の思惑はよそに、今時のおしゃれな若者が付けている高級時計といえばまず外国製の自動巻である。最近おしゃれと商売がうまくなった三男坊O社だけでなく、ついに国産C社も自動巻に注力しはじめた。しかしなぜか未だS社だけはハイブリッドにこだわっている。

S社のこだわりの根底には、クオーツ腕時計は男に許された唯一の正確な時を刻むハイテク装飾品であるという自負があるように思う。しかしそれは間違いだ。間違いという言葉が過激であれば、思いこみもしくは勘違いという言葉が適切かもしれない。現在の男に託された最高のハイテク装飾品は携帯電話でありノートパソコンである。特に携帯電話が基地局から貰う時間は日本の度量衡を支配しているU政省管轄某研究所の時計精度に匹敵する。

つまりS社の最高級クォーツ時計と言えども、あなたの持ち物の中では時間精度は2番目なのである。スタンドアローンのクオーツは所詮衛星と電波という飛び道具には勝てないのだ。それだけではない。ことミクロな時間の経過を測る分には運針が秒単位のクオーツ時計は自動巻時計に勝てない。どうせ勝てないならもっと肩の力を抜いたらどうであろうか、と思うのである。

残念ながらS社には普及価格帯に自動巻が無い。というわけで今回念写した自動巻は昔懐かしいセヰコーファイブの逆輸入品である。どこの国でも時計用電池が簡単に手に入るとは限らないわけであって、今でもアジア、南米、アフリカにはセヰコーファイブが大量に供給されている。今回念写したものは、シンガポールで生産され国内(アメ横もしくはインターネット)で\8000強で売られている。他に中国製のムーブがあると聞くが実物を拝んでいない。はたして\8000の自動巻はどれほどのモノだろうか。

Webmasterが念写した時計はいかにもセヰコーらしいエラの張った独自なケースのデザインである。情けないことに現在のS社のGSシリーズのケースはR社に似ていて、外人から見ればエクスプローラーのパクリにしか見えない。針はGSシリーズ似のN夜光付きドルフィンタイプで高級感を?醸し出している。

しかしこの時計を手にしたあなたはたぶんがっかりするだろう。本体はともかくブレスレットと留め具は薄っぺらで品質が良くないからである。Webmasterは早速紙やすりで角を仕上げた。一方ケースの仕上げは値段を考えると望外のものである。ガラスは強化ミネラルのようで、最近のR社のようにセヰコーファイブの紋章がエッチングされている。これより安い自動巻は存在しないので、偽造防止というよりはS社の矜持の現れであろう。このガラスの硬度はあまり高く無いようだ。

裏フタを開けると7S26と称するムーブメントが現れるが、それは奇しくもWebmasterの20年以上前のセヰコーファイブの7019Aと殆ど同じである。ただ古いムーブにはヘアーラインが施され手仕上げの形跡があるのに比べ、新しいムーブはマット仕上げであっさり作られている。おそらく加工精度の向上で人手の仕上げが減っているのだろう。古くはプッシュだった曜日切り替えが竜頭の回転に変わっている。このムーブの欠点は自動巻のベアリングが頼りないことと手巻きが効かない事である。一方良い点は精度で、月に一分も進まない。裏フタのネジの加工精度はいま一つというところ。

さてダイヤルであるが、値段にも関わらずN夜光のついたインデックスは植字であり、古くは印刷であった”5”の紋章も植字になっている。写真のようにインデックスも紋章も日付の枠も針も値段を考えると望外の仕上げで、数万円する輸入品に匹敵する。セヰコーの紋章や枠はやや細手になっているが、逆に日付の字体は太くなっている。

というわけで、仕上げの良い時計本体と仕上げの悪いブレスレットの組み合わせが興ざめである。国産ムーブを使ってブレスレットにせめてあと\500程度コストをかけて磨き上げれば、上代\15000でも十分魅力的だと思う。かなりの人間が思わず家に持って帰りたい衝動にかられると思うが、どうだろうか。現状ではS社の膨大なラインアップに手頃な値段の自動巻が一つも無い、というのは実に悲しい事実である。本当は21世紀にふさわしい新設計のムーブが欲しい所である。

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April 14
 ●マクロな時間とミクロな時間(機械式時計は不正確か?)

過去の記事の事で、時計産業の方々から時にメイルをいただくことがある。その場合、彼らにはクオーツ時計は機械式より絶対的に正確だ、とするコンセンサスがあるようだ。常識的には正しいコンセンサスのように聞こえるが、Webmasterはそれが正しいとは限らないと考える。

何、最初からムリな話?単なるノスタルジアでは?いや、そうでは無い。科学的かつ論理的な話である。おそらくこの文章を読み終えたあなたは、考えが変わっているであろう。Webmasterは時間にはマクロな時間ミクロな時間があると考える。マクロな時間とは1日何秒進むとか、そういった話で、正確には時刻と呼ぶべきかもしれない。一方、ミクロな時間は、たとえば何秒たったか、というスケールである。

幸いにしてWebmasterが常用している20年選手のセイコーファイブは1月に1分進む程度の誤差に納まっている。1日にすると2秒程度なので、電車の時刻を確かめるのには支障は無い。しかし、この精度はクオーツと比べると一桁、あるいはモノによっては二桁も悪い。つまりマクロな時間に関しては機械式時計はクオーツ式時計にハナからかなわない。

しかしミクロな時間に関しては機械式時計の圧勝である。Webmasterは仕事柄”何秒話せるか”計測することが多い。もちろん脈拍や心拍数も良く測る。この場合、ボロな機械式時計だとクロノグラフ機構が無くても1/6秒程度まで目算が付く。ちょっと上等な機械式時計であれば、1/8秒程度まで計れる。

動画編集をしていると解るが、1秒というのはかなり長い。急げば10語以上話せるのである。一方クオーツ時計は1秒毎の運針なので、精度は常にプラスマイナス0。5秒以上と悪い。仮に1日数回時間経過を測れば、累積された読みとり誤差を考えると、クオーツ式は機械式より遥かに精度が劣ることになる。

それだけでは無い。クオーツ式では秒単位を読みとる場合、次の運針が間近か、あるいは1秒後なのか待つ必要があるため、結局読みとりにより長い時間をかかることになってしまう。また針が継続して動いていないので、その後の時間計測の予測も付けがたい。瞬時の運針がいつ来るのか2、3秒確認する間に時計を見始めた時刻は失われてしまう。

さらに、クオーツ式時計は機械式時計よりも一般的に針が細くかつ短い。これは電池を節約するため駆動トルクが限界までケチられており、太く長い針を使えないからである。従って特に老眼ユーザーにはクオーツ式は機械式より読みとり精度が劣ることになる。ウソだと思ったら良く見比べて欲しい。機械式(左)の長針は分目盛りまで達している。一方同メーカーのほぼ同じデザインのクオーツ式(右)は分目盛りのかなり手前で終わっている(写真はcitizen社からのリンク)。

このように、ミクロの時間精度に関してはクオーツ式は機械式に逆立ちしても精度がかなわない。また老眼ユーザーにとってクオーツ時計は、残り少ない画像処理リソースと残り時間リソースを食いつぶす、極めてできの悪いシェルを積んだ某OSと同じと言えない事もない。市場でバカ高い値をつけているクオーツ時計は、その価値に見合うようなスムーズな運針を実現するメカを積むべきである。

さあ、この文章を読まれたあなたはクオーツ式時計が機械式より確実に精度が高いと言い切れるであろうか。ぜひ両者の運針の具合と針の太さをしばし見比べて、クオーツ時計が失ったモノを考えて欲しい。人間が生活する上で秒というのは、あくまでも連続したスカラー量であって、1秒ごとのデジタル量でないことは疑う余地も無い。

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April 7
 ●次世代メモリDRDRAM蹉跌のナゾ・その2(Rambusの帯域は本当か?)

以前の、

 ●次世代メモリDRDRAM蹉跌のナゾ

にいくつかのレスポンスがあった。特に、

”しかし本当に1.6Gbytes/secで読めるのか?それは読めない。DRDRAMもメモリーセルはSDRAMやEDORAMと同じDRAMだ。従ってメモリー内部クロックはSDRAMと同じ10nsだし、アクセスタイムはやっぱり30MHz相当に過ぎない。だから結局128bit幅のアクセスタイムは約120MHz相当(30*128/32)であり、転送速度は約0.5Gbytes/secになるだけだ。イントルの資料を丸写しする雑誌はみんなこのことを忘れている。”

の部分に対し、Rambusは最大4つのrow-accessをパイプライン発行することができ、その場合のピークはレイテンシーを見かけ上減らすことによって0.5x4=2.0Gbytes/sec(実際には1.6Gbytes/sec)になるのでは無いか?というわけだ。確かにRambusの主張は正しい。もしそれが実際うまく働くなら、の話である。

これに対する答えは巷に溢れている。雑誌でもWebでも繰り広げられたありとあらゆるメモリーアクセステストとベンチマークでRambus800MHz(i820)はPC133MHzのSDRAMに負けている。いや、PC100MHzにも負けている。一部のアプリでの逆転もあるが、それはAGPx4によるグラフィック能力の改善のせいである。その売り文句と現実のギャップに対してRambusもイントルも納得の行く答えを出していない。雑誌は”チューンアップが効いてない”とか言っているが、もっと本質的な問題、つまりご自慢のパイプラインが効果を発揮していないのでは無かろうか。

Webmasterは、その答えをこのページで連綿と続いているCPUキャッシュ効率低下説に求める。以前Windows族でTTフォントをビットマップフォントに変換しただけで、窓操作が格段にスピードアップすることを示した。使ってみてすべての操作が身軽になることを体験されたであろう。

しかしこれもヘンな話である。現在の高速パソコンにとってTTフォント処理など造作も無いハズだ。事実同様にフォント処理が発生する上下スクロールなどはアクセラレーターのせいもあるが実に高速だ。それが何故窓を開くレスポンスを大きく損なうのか。それは、窓を開いた瞬間に発生する雑多かつ非同期なコード/データ処理に日本語フォント処理が加わってCPUキャッシュの効率が劇的に低下するからと考えられる。

キャッシュがミスヒットすると、CPUは新たなメモリーのアドレスを読みに行く。そしてその1発目のレイテンシーはRambusもSDRAMとほぼ同じであり、パイプラインもカラである。不連続なアクセスが非同期に起こる状態はRambus社の言うNonpipelined Bandwidthに相当する帯域で、それはPC100MHzやPC133MHzと変わらない。つまり、現状のRambusメモリーコントローラーがパイプラインを十分に働かせるコマンドを発行していないとすれば、メモリーテストの結果とあう。

さらにナゾなのは、i820がメモリー量の大きなアプリ(たとえばphotoshop)でPC100より格段に帯域が下がる事である。もともと離れたアドレスへのアクセスはRambusが得意のハズでは無かったか。もちろん、Rambusはメモリーの読み書きが単調なコントローラーやフレームバッファー(つまりグラフィックカード)では主張に近い性能を発揮するであろう。グラフィックカードではフレームバッファーの情報の読み出し(つまり画面表示)は間違いなく毎回規則正しく同じ順序で行われるからだ。

ではパソコンのメモリー問題をクリアするにはどうしたら良いのだろう。答えは、

 ●ペンティアム-IIの外部バス100MHzのナゾ (オールSRAMマシン待望編)

に書いたとおり、メインメモリーをすべてSRAMにすれば良い。SRAMはおそらくDRAMの数倍の価格になるであろうが、コストをかける事が許されるサーバーでは未曾有宇の性能を発揮することだろう。そしてボリュームゾーンでは実装がより簡単なメモリーアーキテクチャーが求められると考える。もちろん今後OSが肥大化を続ければメモリーアクセスに関するすべての努力は全て灰燼に帰すのは言うまでも無い。

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April 1
 ●ボルスタレス台車のヨー特性のナゾ

地下鉄が脱線し対向する車両と衝突し死者が出るという大きな事故があった。事故後台車が調査されたが、輪軸には損傷が無く空気バネもパンクしていなかったと言う。脱線は曲率と勾配がきつい塗油装置も設定された区間で起きたが、あの低速度での車輪のフランジが線路に乗り上げる”せり上がり脱線”が起きたことに専門家はクビをひねっていると言う。今回の脱線は軌道と車輪の状態にボルスタレス台車の特性、さらに軽量車体が競合して起こったと思われるが、速く原因の詳細が解明されることを期待したい。

さて、報道写真から判断すると、問題の台車は図の系統である。輪軸が並行する2枚の板バネで支持されたSU型変形ドイツミンデン式にゴムを併用した、極めて精度と保守性にすぐれた方式だ。これはJR東日本の2階建て新幹線の台車にも使われているほど高級な機構で、これに問題があるとすれば曲線区間にやや高すぎる輪軸の支持剛性だろう。

台車と車両は台車中央の牽引装置で結ばれている。通常このクラスだと1本リンクもしくはZリンクの牽引装置が普通だが、この台車は門型となっている。これも問題は起こりそうに無いが、気になるのはボルスタレス台車のヨー特性(ヨー剛性)である。

通常の枕梁(ボルスタ)を使用した台車(左と中央)には心皿と側受けがある。台車は心皿を中心に回転し、その回転方向(車両からみればヨー)のダンピングは心皿もしくは側受けに貼ってある摺板(レジン砥石のようなもの)の摺動抵抗が担当する。古い新幹線0系や100系では曲がりがきつい東京駅付近で”ミシミシゴゴゴゴ”と音をたてるが、この”ゴゴゴゴ”が心皿や側受けが摺っている音である。

一方枕梁の無いボルスタレス台車では空気バネ自体が側受けとなり、台車の回転によるズレは大変位空気バネの袋が変形することによって吸収する。ところが空気バネは横方向の変位に対して弾性を持つが、ダンピング能力が殆ど無い。従って高速車両の台車では写真のように(JR-WESTののぞみ500系写真のリンク)、台車と車両との間に太い油圧式ダンパーを置いて台車の回転方向のダンピングをはかっている。

このダンパーの特性の設定は非常に難しいと言う。それは従来の台車の摺板は静止時から摺り始める時に最大のダンピング効果があるのに対し、油圧ダンパーはある程度動き出さないとダンピング効果が無いからだ。台車は軌道狂いによって蛇行するが、台車の回転方向のダンピングは古い新幹線では側受けの摺板とボルスタアンカで制御される。一方新しい新幹線のボルスタレス台車では、牽引装置の左右動ダンパーと台車の回転方向のヨーダンパーによって制御される。新しいのぞみ300系の乗り心地が古い100系より必ずしも良くない(速度差もあるが)と言われる原因の一つがボルスタレス台車のヨー特性とする説もある。

で今回の台車にはヨーダンパーが無い。これは低速区間を走る車両なので必要無いと判断されたからだろう。車両がゆっくり曲がる時にはヨーダンパーは働かないからである。このため日本中の通勤型車両にはヨーダンパーの無いボルスタレス台車はいくらでもある。しかしヨーの剛性とダンピングの兼ね合いは重要であり、実際通勤型車両と言えども高速走行する場合にはヨーダンパーの有無でかなり乗り心地が違う。

次回ヨーダンパーの無いボルスタレス台車の電車に載るときにぜひ車両の揺れを注意深く観察して欲しい。ボルスタレス台車では上下方向の振動が良く吸収されて乗り心地が良いのに比して、横方向(ヨー)は何となくフワフワと揺れてすわりが悪い。それがボルスタレス台車のヨー特性なのである。

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