山本の主張

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2020年5月15日 PCR検査制限とCOV19対策について

現在に至る一連の国のCOV19への対応は違和感が付きまとい続けている。いや、国というよりわが国の感染専門家という方々に対する違和感かもしれない。その最大のものがPCR抑制論である。現場の医療をやっていて、本当に驚いたのが、39日に、多発性のウイルス性陰影がある患者が出て、PCR検査を申請したところ、4日間37.5度以上が継続していないことをもってPCRの対象外と判定されたことであった。地元のTVでのニュース番組でこの問題を発言するなどしたが、その後大分での対応は、医師の連絡があれば相談窓口で対象外かどうか審査しないという形に改められたのはよかった。

これまで軽症者にはPCR検査を推奨しないという感染関連学会の提言と、保健所にある帰国者接触者相談窓口による審査がこの問題に対する二つの大きな壁となってきた。まず感染学会の考えは、軽症者に検査をしたら、検査を希望する軽症者が病院に殺到し、却ってそこで感染者が増えるという妄想と、多く発見された軽症者で病院が溢れて医療が必要な重症者の治療ができなくなるという二つの危惧からきていた。彼らは、重症者は具合が悪いのだから見落とすわけがない。そしてその重症者をCOV19と確定させれば治療に支障はない。そのため重症者だけ病院で見ればすむと判断したのだろうか。しかしそこには二つの大きな問題があった。一つは重症者は難病のように突然市中に発生するのではなく、未発見の感染者から感染して発生するのだという視点が欠落していることと、この軽症者の集団を放置したら重症者が次々と拡大再生産され、却って病院機能が阻害されるということである。クラスターを追跡して潰すという方針も、PCR抑制方針の下では、施設のなかで重症者が発生しないとクラスターかどうか分からない。分かったときには多数の感染者が出てまさしくクラスターが成立しているのだ。わざと大火にしてから消火するというギャグのような方法論になっている。そしてこの事態が3月から4月にかけて全国の病院、施設で頻発した。そのためPCR抑制論が力を失い感染関係以外の有識者から批判がなされるようになってきたが、有識者会議に抑制論を提言した感染関係の会長がいるためこれまでの方針の見直しができない。窓口の問題としては、PCR検査も医師が必要と判断したら速やかに実行するという当たり前のことが、この窓口があるがために阻害されている。このシステムのために保健所の職員はオーバーワークとなり怒った医師との言い争いがストレスとなり仕事は滞る。解決法は、窓口を廃止すればよいだけのことだ。保健所は検体輸送係に純化したらよいのだ。これならお互いストレスも生じない。ちなみに未だに帰国者接触者相談窓口などという名称をそのままにしているのはどういうセンスなのだろう。あくまでクラスター追跡こそがCOV19対策だと金科玉条のごとく記しているかのようだ。このたび抗原検査キットが保険収載された。しかし、このキットも全国の重症者治療施設に限定して配るらしい。また同じ間違いである。そういうところはすでにPCRが出来るのだ。このようなキットはPCRと縁遠い中小病院や介護施設にこそ配るべきだ。たくさん配る必要はない。一施設1,2本だけ配れば、とりあえずクラスターを形成する前にCOV19患者を早期発見できる。軽症者を放置して重症者を拡大再生産させる愚をいつまで続けるのかというのが小生の感じる違和感の正体である。

最後にPCR抑制論者の言い訳に、日本は他の国のような感染爆発が避けられている(だからPCR抑制は正しい)という議論がある。PCRを抑制したから感染爆発が避けられたという有力な論拠はない。むしろ両者に何の関連もない。単に日本人の生活習慣と自粛の効果であり、BCG効果を考える文系論者はいるが、可能性があるなら東アジア地域における有史以前の感染の耐性のおかげではないか。なお、時間が経てばウイルスの凶暴性が減少すると語られることがあるが、これには一理がある。ウイルスは不断に変異をし続け、最適化を図る競争をしているわけだが、凶暴性が高いウイルスは宿主の死亡によって自らの生存戦略も立ち行かない。宿主と共存できるように変異することが、ウイルスの生存戦略にとって最適解となるからである。せめてこれを期待したい。